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ベトナム人材の給与相場【2026年版】職種別の実データと、日本企業が外しやすい3つのポイント

ベトナム人材の給与相場を職種別・経験年数別に整理。大卒初任給300ドル〜、日本語人材は3割増、ITシニアは月33万円。13ヶ月目給与・GrossとNet・試用期間まで、日本企業が予算設計で外しやすいポイントを出典付きの実データで解説します。

先に相場を言ってしまいます。ベトナムの日系企業で働くベトナム人スタッフの月給は、大卒初任給で300ドル(約4.8万円)から。日本語と英語が堪能なら初任給の時点で400ドル(約6.4万円)に上がります。社会人経験2年以上で日本語ビジネスレベルなら600ドル(約9.6万円)から、経験7年のマネージャークラスで1,500ドル(約24万円)から。そしてITのシニアエンジニアになると、月33万円。最後の数字を見て「思ったより高い」と感じたなら、この記事は読む価値があると思います。

僕たち自身、ベトナムで自社のメンバーを現地媒体とクラウドソーシング経由で採用してきました。そのとき痛感したのが、日本語で読める給与データがほとんどなく、あっても出典がばらばらで、どれを信じていいか分からないこと。この記事では、出典を明示できる公開データだけを使って、2026年時点のベトナムの給与相場を職種別・経験年数別に整理します。

なお円換算は1USD=160円、1,000VND=6.1円(2026年8月時点の実勢)で統一しています。為替は動くので、USD・VNDの原数値のほうを見てください。

ベトナム人スタッフの給与相場・早見表【2026年】

日系企業でのポジション別月給

日系企業に強い人材会社が公開している相場です(出典は記事末尾)。

区分 月給(USD) 円換算 条件
大卒初任給 $300〜 約4.8万円〜
大卒初任給(日本語・英語ともに堪能) $400〜 約6.4万円〜 語学で初任給から3割増
中途(社会人2年以上・日本語ビジネスレベル) $600〜 約9.6万円〜
総務・秘書クラス $800〜 約12.8万円〜 日本語N1・日系企業5年の例
生産管理マネージャー $1,500〜 約24万円〜 経験7年・英語ビジネスレベルの例

最初に押さえてほしいのは、日本語要件を付けると初任給の時点で3割上がるという構造です。「日本語ができる人を、できない人と同じ予算で採ろうとする」と、この最初の段差でつまずきます。

経験年数別の年収

Talentnet-Mercerの報酬サーベイ(2025)に基づく水準です。

経験年数 年収(USD) 月額換算 円換算(月額)
Entry(0〜2年) $3,000〜5,000 $250〜417 約4〜6.7万円
Mid(3〜7年) $6,000〜10,000 $500〜833 約8〜13.3万円
Senior(8年以上) $12,500〜20,000 $1,042〜1,667 約16.7〜26.7万円

上のポジション別相場と概ね整合します。中途2年以上$600〜は、ちょうどMid帯の下限です。

職種別の年収

同じくTalentnet-Mercer(2025)と市場推計から、代表的な職種の年収です。

職種 年収(USD) 月額換算(USD) 円換算(月額)
マーケティングマネージャー $12,500 $1,042 約16.7万円
ソフトウェア開発者 $10,000 $833 約13.3万円
財務アナリスト $9,000 $750 約12万円
土木エンジニア $8,000 $667 約10.7万円

ここまでが「よく引用される相場」です。ただ、この表のソフトウェア開発者$10,000(月約13.3万円)を鵜呑みにしてIT人材の予算を組むと失敗します。次で説明します。

IT人材だけは別の相場で見る

ITviecの職種別中央値(2025-2026)

ベトナム最大級のIT特化求人媒体ITviecが、回答者1,839名の調査で職種・経験年数別の月額中央値を公開しています。給与設計の一次資料として使える数少ないデータです。

職種・レイヤー 月額(VND) 円換算
バックエンドエンジニア(未経験) 1,240万 約7.6万円
バックエンドエンジニア(8年以上) 5,490万 約33万円
プロダクトオーナー/マネージャー 5,010万 約31万円
同(8年以上) 7,500万 約46万円
CTO/CIO/VPoE 1億125万 約62万円

「ベトナムだから安い」の外側にある層

8年以上のバックエンドエンジニアで月33万円。CTOクラスで月62万円。この水準は、多くの日本企業が想定する「ベトナム価格」の外側にあります。

誤解のないように書くと、これは「ベトナムの人件費が高い」という話ではありません。中堅までの層は先ほどのTalentnet-Mercerの水準(開発者で月13万円前後)で、日本と比べれば依然として差があります。ただし上に行くほど市場価格は急勾配で上がり、シニア層では「安いから」という前提が成立しない。この勾配を知らずに一律の予算感で募集をかけると、シニア層だけ誰も来ない、という結果になります。

IT人材の採用チャネル自体も一般職とは別です。どの媒体をどう使い分けるかはベトナムで人を採る方法【2026年版】で整理しています。

日本語人材のプレミアムと、その裏にある変化

初任給で3割増は「固定費」と考える

日本語ができるベトナム人は、初任給の時点で3割高い。これは間違いなく払う価値がある差額です。日本本社とのやり取り、日本側の品質基準の理解、通訳を挟まないスピード。この3つが買えるなら、3割の差額は安い、というのが僕たちの実感です。

母数はあります。ベトナムの日本語学習者は169,582人(2021年度・国際交流基金調査)で世界6位。うち大学など高等教育の学習者が45,752人います。

ただし「日本人気」を前提にした採用は危うくなっている

一方で、変化のサインも出ています。国際交流基金の2024年度調査では、ベトナムの日本語学習者は2021年度比で3.0%の微減にとどまる一方、日本語教師は25.1%減、日本語教育機関は22.1%減。供給パイプラインの側が細っています。

もうひとつ。日本に在留するベトナム人(留学生・特定技能などが対象で、ベトナム現地の管理職層の調査ではない点に注意)に「日本で5年以上働きたいか」を聞いた調査では、そう答えた割合が2025年の81.7%から2026年は63.3%へ、1年で18.4ポイント下がりました(マイナビグローバル調査)。理由として挙げられているのは、円安による送金の目減りと、母国側の賃金上昇です。

つまり「日本語ができる人材は、日本で働きたい人材」という等式が崩れつつある。現地に残る日本語人材を、現地の給与相場で競って採る局面に入っています。日本語人材の探し方が総合媒体と別枠になっている話は、採用チャネルの記事に書きました。

市場全体の平均給与と、日系オフィス職の相場を混ぜない

ベトナム統計総局(2026年第1四半期)の平均月収は、全国で900万VND(約5.5万円)、給与所得者で1,000万VND(約6.1万円)、都市部で1,070万VND(約6.5万円)です。

この数字はニュースでもよく引用されますが、全就業者ベースの平均であり、日系企業がオフィス職を採るときの相場とは母集団が違います。「国の平均が5万円台だから、6万円出せば十分いい待遇のはず」と考えると、先ほどの表と見比べて分かるとおり、日本語人材にもIT中堅にも届きません。国の統計は背景として頭に入れつつ、予算は職種別の相場で組んでください。

ちなみに製造業ワーカーを含めた国別の比較は東南アジアの人件費比較【2025年版】で、進出先としての国選びはベトナム・タイ・インドネシア比較で扱っています。

この記事の相場観をベースに、自社の職種でいくらが妥当かを確かめたい方は、こちらからご相談ください

月給の数字だけ見ると失敗する——総額の設計

給与相場を調べる日本企業のほとんどが月給の数字だけを見ますが、ベトナムでは月給の外側に予算が乗ります。ここを知らないままオファーを出すと、最終段階で条件が壊れます。

GrossとNetの混在問題

ベトナムの給与交渉では、Gross(額面)とNet(手取り)が混在します。候補者はNetで会話し、企業はGrossで予算を組むことが多い。ここを曖昧にしたまま「月1,000ドルで合意した」と思っていると、あとから「手取りで1,000ドルだと思っていた」が起きます。

特に危険なのがNet保証です。手取り額を保証すると、会社が負担する税金の分まで課税所得に乗る(グロスアップ)ため、会社側の総負担が読めなくなります。個人所得税は累進で、高所得帯では30〜35%に達します。オファーの前に、GrossかNetかを社内で確定させて、求人票の段階から明記する。これだけで防げるトラブルです。

13ヶ月目給与という慣習

ベトナムには「13ヶ月目給与」という慣習があります。法定ではありませんが、Tết(テト=旧正月)の前に月給1ヶ月分を追加支給するのが広く定着しており、候補者は当然あるものとして年収を計算します。予算を組むときは年間の人件費を「月給×13」で見ておくのが安全です。

なおTết前に13ヶ月目給与を受け取ってから辞める、という動きが毎年定型で起きます。採用のタイミング設計に効いてくる話なので、詳しくは採用チャネルの記事の採用カレンダーの節を読んでください。

試用期間の給与は本採用の85%以上

試用期間中の給与は本採用時の85%以上、と法律で決まっています。期間の上限は職位で異なり、管理職候補で180日以内、高度専門職で60日、中程度の専門職で30日です。「試用期間だから安く」には法的な下限がある、と覚えておいてください。

法定の最低賃金(2026年1月〜)

参考までに、地域別最低賃金です。

地域区分 月額(VND) 円換算
地域1(ハノイ・ホーチミン等の都市部) 531万 約3.2万円
地域2 473万 約2.9万円
地域3 414万 約2.5万円
地域4 370万 約2.3万円

ここまで読んだ方には言うまでもないと思いますが、最低賃金は「この金額で人が採れる水準」ではなく法定の床です。大卒初任給(約4.8万円)の時点で地域1の1.5倍、中途採用の実勢とは2〜3倍の開きがあります。

相場は止まっていない——賃金上昇のデータ

ベトナムの給与相場を調べるとき、忘れてはいけないのが上昇スピードです。

ジェトロの調査では、製造業ワーカーの月額基本給は2013年の162ドルから2023年の273ドルへ、10年で68.5%上昇しました。非製造業スタッフも同期間で63.6%上昇。直近の年間昇給率は5%台で、アジアでも上位の水準が続いています。在ベトナム日系企業の62.0%が「人件費の高騰」を投資環境上のリスクに挙げています。

さらに、同じジェトロの2025年度調査(ベトナム906社回答)では、「採用が困難になっている」と答えた企業が48.2%。2023年の11.2%から2年で4倍以上に跳ね上がりました。ジェトロが原因として挙げるのは、中国・台湾・韓国企業との人材獲得競争です。つまり、給与相場を「今の数字」で固定して3年の事業計画を組むと、後半で必ずズレます。ジェトロの市場調査ではベトナムの昇給率は年6〜7%でアジア最高水準の一つとされており、昇給原資は年6〜7%で織り込むのが実務的な置き方です。

製造業の進出コスト全体の話はベトナム製造拠点の記事、進出費用の全体感は海外進出の費用相場も参考にしてください。

日本企業が給与設計で外しやすい3つのポイント

最後に、ここまでの内容を「やりがちな失敗」の形でまとめます。

①相場の下限で募集をかけて、時間を失う

「まず安めに出して、反応を見て上げる」は、ベトナムでは高くつきます。採用難が2年で4倍に悪化した市場では、相場を下回る求人には応募自体が来ません。3週間待って応募ゼロ、条件を上げて再掲載——この失った1ヶ月の機会損失は、最初から相場で出していれば払わずに済んだものです。

②ひとつの出典の数字で予算を確定させる

この記事で見てきたとおり、同じ「ソフトウェア開発者」でも、報酬サーベイの中堅値(月約13万円)とIT特化媒体のシニア中央値(月33万円)では2倍以上違います。どちらも正しい数字で、母集団が違うだけです。職種・経験年数・語学要件を固定してから、複数の出典で当てる。給与レンジの設計はこの順番でやってください。

③GrossかNetかを決めずにオファーを出す

最終段階で一番壊れやすいのがここです。月給の数字そのものより、その数字が額面か手取りか、13ヶ月目給与を含むか、を先に確定させる。オファーレターの直前ではなく、求人票を書く段階で決めるのが正解です。

まとめ:相場を知ることは、単価を自社で決めるための前提

ベトナムの給与相場は、「安い国」という一言では捉えられなくなっています。中堅までは依然として日本との差が大きい一方、シニアITや管理職は急勾配で上がり、市場全体も年5%以上のペースで動いている。この地形を知らないまま採用を始めると、給与の設定を外部に委ねるしかなくなり、採用単価を自社では決められなくなります。

逆に言えば、職種別の相場を自社で持ち、Gross/Netと13ヶ月目給与まで含めて設計できていれば、ベトナムの採用は計画が立つ市場です。データはこの記事のとおり公開されています。あとは自社の職種に当てはめるだけです。

自社の募集職種で給与レンジをどう置くべきか、具体的に確かめたい方はこちらからご相談ください。職種と想定条件をいただければ、公開相場との差分をお答えします。

株式会社EONは、ベトナムで組織を作る日本企業向けに、現地採用のRPO(Recruitment Process Outsourcing=採用業務の受託)を提供しています。


出典

よくある質問

ベトナム人スタッフの給与相場はいくらですか?
日系企業の大卒初任給で月300ドル(約4.8万円)から、日本語・英語堪能なら400ドル(約6.4万円)から。社会人2年以上・日本語ビジネスレベルで600ドル(約9.6万円)から、経験7年前後のマネージャークラスで1,500ドル(約24万円)からが公開相場です。ITのシニア層は別枠で、8年以上のバックエンドエンジニアの中央値は月5,490万VND(約33万円)です。
日本語ができる人材はどのくらい高くなりますか?
初任給の時点で約3割上がります。日本語人材は総合求人媒体に出しても届きにくく、専用の求人面やコミュニティが別に存在するため、探すチャネルも変える必要があります。
13ヶ月目給与は必ず払わないといけませんか?
法定ではなく慣習です。ただしTết(旧正月)前の支給が広く定着しており、候補者は「あるもの」として年収を計算します。払わない設計にすると、その分オファーの競争力が落ちます。年間人件費は月給×13で見積もるのが実務的です。
ベトナムの給与は今後も上がりますか?
製造業ワーカーの基本給は10年で68.5%上昇し(ジェトロ調査)、直近も年5%台の昇給率が続いています。日系企業の62.0%が人件費高騰をリスクに挙げる状況で、少なくとも中期計画では年6〜7%の昇給原資を織り込むべきです。
試用期間中は給与を下げられますか?
本採用時の85%以上、という法定の下限があります。試用期間の上限も職位別に決まっており、管理職候補で180日以内、高度専門職で60日です。
GrossとNetはどちらで提示すべきですか?
社内の予算管理はGross(会社の総負担ベース)で行い、候補者への提示時にGross表記であることを明記する形を勧めます。Net保証はグロスアップで会社負担が読めなくなるリスクがあります。いずれにせよ、どちらの数字なのかを求人票の段階から曖昧にしない。それだけで最終段階のトラブルの多くを防げます。
相場どおりに出しているのに採れません。何が原因ですか?
給与以外の要因(媒体の選択・求人票の書き方・選考スピード・Tết前後のタイミング)が原因のことが多いです。ベトナムの採用は媒体ごとに得意なレイヤーがはっきり分かれているので、[ベトナムで人を採る方法【2026年版】](/articles/vietnam-recruitment-channels-2026)を参考にチャネルから見直してみてください。