ベトナム進出 / 製造業 / 海外事業展開 / 東南アジア / コスト

ベトナムに製造拠点をつくるなら、知っておくべき現実の話

ベトナム製造業進出の費用・リスク・手続きを、実際に東南アジアで日本企業の海外展開を支援してきた経験から書きました。

結論から言うと、2025年現在、ベトナムは日本の製造業にとって最も現実的な進出先です。ただし「安いから」という理由だけで行くと、ほぼ確実に苦労します。

僕たちEONは東南アジア4カ国で日本企業の海外事業展開を支援していますが、ベトナム案件では毎回と言っていいほど同じ落とし穴にハマる企業を見てきました。この記事では、その現場感も含めて正直に書きます。

ベトナム製造業の何がそんなにいいのか

数字だけ見ると、2024年のGDP成長率は7.09%。ASEAN域内でトップクラスです。製造業はGDPの約25%を占めていて、Samsung、LG、Foxconnといったグローバル企業がどんどん生産能力を拡大しています。

でも、日本企業にとって本当に重要なのはそこじゃない。

ベトナムが選ばれる本質的な理由は、チャイナ・プラスワンの受け皿として最も成熟したサプライチェーンが既にあることです。2023年末時点で2,300社以上の日本企業がベトナムで事業展開していて、部品調達から物流まで、日本語で対応できるネットワークがそれなりに揃っています。

ゼロから全部つくらなくていい。これが一番大きい。

費用の話 — 「思ったより安くない」が正直なところ

「ベトナムは人件費が安い」というのは2015年の話です。最低賃金は毎年6〜8%ペースで上がっていて、2025年の最低賃金は月額468万VND(約28,000円)。10年前の倍近い水準になっています。

実際にかかる費用はこんな感じです。

項目 概算 補足
法人設立 50〜150万円 業種による許認可で上振れ
工業団地の賃貸料 $80〜150/㎡/年 ホーチミン周辺は高い
工場建設 $200〜400/㎡ レンタル工場なら不要
最低賃金 月約28,000円〜 地域4区分。毎年上がる
駐在員のビザ・労働許可 20〜50万円/人 1人あたり

正直、「1,000万以下で始められる」みたいな記事を見かけますが、それはレンタル工場を使って、駐在員も最小限にして、という条件付きの話です。自社工場を建てて日本人を3人駐在させたら、初年度で5,000万は普通に飛びます。

手続きの流れ — 面倒だけど、型がある

進出手続き自体は、正直そこまで難しくありません。型が決まっているので、信頼できる現地コンサルタントと組めば粛々と進みます。

大まかな流れは5ステップです。

1. 進出形態を決める。 製造業なら100%外資の現地法人が主流。ベトナムはWTO加盟国なので、多くの製造業分野で外資100%がOKです。

2. 投資登録証(IRC)と企業登録証(ERC)を取る。 計画投資局への申請で、通常15〜25営業日。業種によっては環境影響評価が追加で入るので、そこは事前に確認してください。

3. 工業団地を選ぶ。 北部(ハノイ周辺)は電子・機械系、南部(ホーチミン周辺)は食品・繊維系の集積地。最近はダナンやハイフォンも増えてます。

4. 設備を入れて人を採る。 ベトナムの労働力は若い(平均年齢32歳)し、識字率97%で教育水準も高い。ただしエンジニアクラスの採用は競争が激しいので、早めに動いた方がいい。

5. 操業開始。 法人税は標準20%。工業団地なら2〜4年の免税、その後4〜9年の50%減税という優遇税制が使える場合があります。

僕たちが見てきた「よくある失敗」

支援先の企業から聞く話、そして実際に僕たちが現場で目の当たりにした事例から、よくある失敗パターンを3つ挙げます。

人件費だけ見て進出を決めた。 さっきも書いたけど、最低賃金は毎年上がります。「日本の1/5で人が雇える」は事実だけど、5年後には1/3になる。自動化投資とセットで考えないと、コスト構造が早晩破綻します。

部品調達を甘く見た。 「現地調達できるだろう」と楽観して進出したものの、実際は部品の7割を中国から輸入するハメに。ローカルサプライヤーの育成には2〜3年かかるのが現実です。

法規制の変更に対応できなかった。 ベトナムは法整備が進行中の国です。環境規制、労働法、税制が頻繁に変わる。現地の法律事務所と顧問契約を結んでいない企業は、ある日突然コンプライアンス違反を指摘されて慌てることになります。

うまくいっている企業の共通点

逆に、ベトナムでしっかり事業を回せている日本企業には共通点があります。

まず、最初から大きく張らない。レンタル工場やテスト生産から入って、現地の感覚をつかんでから本格投資に移行する。これが鉄板です。

次に、ベトナム人マネージャーの育成に本気で取り組んでいる。日本人駐在員が全部仕切る体制だと、いつまで経っても自走しない。3年計画で現地マネージャーを育てる覚悟がある企業は強い。

そして、日本品質へのこだわりは持ちつつ、現地の商習慣には柔軟に対応する。この塩梅がうまい企業が結果を出しています。

最後に

「安いから行く」ではなく「ベトナムでしかできないことがあるから行く」。この視点で進出計画を組めるかどうかが、成否を分けます。

FTAネットワーク(CPTPP、RCEP、EU-ベトナムFTA)の恩恵、若くて教育水準の高い労働力、成熟しつつあるサプライチェーン。これらを活かせる事業構想があるなら、ベトナムは今でも最良の選択肢の一つです。

僕たちEONは、ベトナムをはじめとする東南アジアへの事業展開を、市場調査から現地パートナー開拓まで一気通貫で支援しています。「まだ構想段階だけど壁打ちしたい」くらいの温度感で大丈夫です。こちらから気軽にどうぞ

よくある質問

ベトナムで製造業を始めるのに最低いくら必要?
レンタル工場を使えば初期投資1,000万円以下でスタートできます。ただし自社工場建設+日本人駐在員3名の体制だと、初年度で5,000万円は見ておくべきです。
ベトナム進出で一番多い失敗は?
人件費の安さだけを理由に進出するケースです。最低賃金は毎年6〜8%上がっていて、5年前と今では全く違う。自動化投資とセットで計画しないとコスト構造が破綻します。
法人設立にどのくらい時間がかかる?
投資登録証と企業登録証の取得で通常15〜25営業日。ただし環境影響評価が必要な業種だと2〜3ヶ月かかることもあります。
北部と南部、どちらがいい?
業種次第です。電子・機械系なら北部(ハノイ・ハイフォン)、食品・繊維系なら南部(ホーチミン周辺)にサプライチェーンが集積しています。
ベトナムに製造拠点をつくるなら、知っておくべき現実の話 | EON inc.