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海外法人設立の手順と費用|6ステップの流れと国別の相場を実務目線で解説

海外法人設立の手順を6ステップで整理し、初期費用とランニングコストの内訳、東南アジア主要国(ベトナム・タイ・インドネシア)の違いを実務経験から解説。進出形態の選び方、業種の外資規制、銀行口座開設の難所、よくある失敗まで網羅します。

「海外に法人を作るって、具体的に何をどの順番でやればいいの? で、結局いくらかかるの?」――海外進出を決めた企業から、僕たちEONが最初に聞かれるのがこの2つです。海外法人の設立は、国によって手続きも費用も大きく違い、ネットの情報は古かったり国がごちゃ混ぜだったりで、正直分かりにくい。

この記事では、海外法人設立の基本的な手順を6ステップで整理し、東南アジア主要国を中心に費用の相場感を示します。「現地法人・支店・駐在員事務所のどれを選ぶべきか」という最初の分岐から、設立後に意外と見落としがちなランニングコストまで、実務で伴走してきた経験をもとにまとめます。

先に大事なことを言っておくと、海外法人設立でつまずく企業の多くは、手続きの難しさではなく「最初の確認」と「運営費の見積もり」を飛ばしたことが原因です。業種の外資規制を確認せずに進めて計画を組み直す、設立費用は払えたのにランニングコストで資金が尽きる――この2つが二大失敗パターンです。手順そのものは代行に任せれば進みますが、この2点だけは経営側が握っておく必要があります。

海外法人設立の前に決めるべき「進出形態」

手順の話に入る前に、そもそもどの形態で出るかを決める必要があります。ここを飛ばして「とりあえず現地法人」と進めると、不要なコストを抱えることがあります。

現地法人・支店・駐在員事務所の違い

主な選択肢は3つです。それぞれ設立の重さも、できることも違います。

形態 できること 設立の重さ 向いている段階
現地法人(子会社) 売買・契約・雇用すべて可能 重い 本格進出・売上を立てる
支店 本社の一部として営業可能 中程度 一部業務の現地化
駐在員事務所 市場調査・情報収集のみ(営業不可) 軽い 進出前の様子見

多くの中小企業が最終的に選ぶのは現地法人ですが、「まず市場を見たい」段階なら駐在員事務所から始める選択もあります。進出形態の選び方は海外進出の手順を5ステップで整理でも詳しく触れています。

出資比率と業種規制の確認

国によっては、外資の出資比率に上限がある業種があります。たとえば小売や物流などは「外資100%不可」のケースがあり、現地パートナーとの合弁が必須になることも。設立手続きに入る前に、自社の業種が現地で外資規制の対象かを必ず確認してください。これを見落とすと、設立後に事業ができないという最悪の事態になります。

海外法人設立の手順【6ステップ】

形態と業種規制を確認したら、いよいよ設立の手続きです。国による細部の違いはありますが、大きな流れはどこも共通しています。

ステップ1:会社名・事業内容・資本金の決定

会社名の現地での使用可否を確認し、定款に記載する事業内容(事業目的)を決めます。事業目的は後から追加すると手間なので、将来やる可能性のある事業も含めて広めに設定しておくのがコツです。資本金は国ごとに最低額の規制があり、業種によっては高めに設定が必要なこともあります。

ステップ2:必要書類の準備と認証

本社の登記簿謄本、取締役のパスポート、株主構成を示す書類などを準備します。多くの国でこれらの書類に日本での公証や、在日大使館での認証(領事認証)が必要になります。この認証手続きが意外と時間を食うので、早めに着手してください。

ステップ3:現地当局への登記申請

準備した書類を現地の登記当局に提出します。国によってはオンライン申請が進んでいる一方、いまだに紙ベースで窓口に何度も足を運ぶ必要がある国もあります。現地の会計事務所や設立代行に依頼するのが一般的です。

ステップ4:銀行口座の開設

法人登記が完了したら、現地銀行で法人口座を開設します。実はこのステップが最大の難所になることが多く、マネーロンダリング対策の厳格化で、外資企業の口座開設は年々ハードルが上がっています。取締役の現地訪問が必須だったり、面談に数週間かかったりするので、スケジュールに余裕を持たせてください。

ステップ5:各種登録(税務・社会保険など)

税務当局への登録、付加価値税(VAT/GST)の登録、従業員を雇う場合は社会保険関連の登録が必要です。ここを漏らすと後から罰則の対象になることがあるので、現地の専門家に抜け漏れをチェックしてもらいましょう。

ステップ6:ライセンス・許認可の取得

業種によっては、営業を始める前に追加のライセンスが必要です。製造業の工場操業許可、食品の輸入販売許可、ITサービスの特定ライセンスなど、業種ごとに異なります。これも設立と並行して早めに動くべき項目です。

海外法人設立にかかる費用の内訳

ここからが本題の費用です。費用は「設立時にかかる初期費用」と「毎月かかるランニングコスト」に分けて考えると整理しやすいです。

初期費用の内訳

項目 金額の目安 備考
登記・登録費用 10〜50万円 国・業種による
設立代行・専門家報酬 30〜100万円 会計事務所・代行会社
書類認証・翻訳費用 5〜20万円 領事認証・公証含む
資本金 国の最低額〜 業種により高額化も
オフィス初期費用 10〜50万円 保証金・内装等

設立代行に丸ごと依頼した場合、資本金とオフィスを除いた純粋な手続き費用で、ざっくり50〜150万円が一つの目安です。国別の具体的な金額感はインドネシア進出にいくらかかるか海外進出の費用相場も参考にしてください。

ランニングコストの内訳

意外と見落とされがちなのが、設立後に毎月・毎年かかる固定費です。

項目 金額の目安(月額) 備考
会計・記帳代行 3〜10万円 現地の会計基準対応
税務申告・監査 年20〜60万円 法定監査が必要な国も
オフィス賃料 5〜30万円 立地・規模による
現地スタッフ人件費 国による 採用する場合

「設立費用は払えたが、毎月のランニングコストの見積もりが甘くて資金繰りが苦しくなった」という相談は少なくありません。設立はゴールではなくスタートなので、最低1年分の運営費を確保してから動くべきです。特に売上が立つまでには、現地法人を作ってから半年〜1年かかることも珍しくありません。その間も会計代行や賃料は毎月出ていくため、「売上ゼロでも回せる期間」をどれだけ持てるかが、現地事業を軌道に乗せられるかどうかの分かれ目になります。資金計画の立て方は海外進出の費用相場の考え方も合わせて確認してください。

海外法人の設立を検討していて、「自社の業種・進出先だと結局いくらかかるのか」を具体的に知りたい場合は、EONにご相談ください。現状をヒアリングした上で、設立から運営までの概算を一緒に出します。

海外法人を設立した後にやるべきこと

設立そのものより、設立後の立ち上げで差がつきます。登記が完了して安心してしまい、運営の準備が後手に回ると、せっかく作った法人が機能しません。設立直後にやるべきことを整理します。

会計・税務の体制づくり

現地の会計基準に沿った記帳と、定められた頻度での税務申告が必要です。日本の感覚で「決算は年1回」と思っていると、月次や四半期での申告義務がある国もあり、漏らすと罰則の対象になります。設立と同時に現地の会計事務所と顧問契約を結んでおくのが安全です。

現地スタッフの採用とマネジメント

事業を回すには現地スタッフが必要ですが、採用の進め方も労務管理も日本とは大きく異なります。解雇規制や残業・休暇の扱いは国ごとに違うため、現地の労働法を理解した上で雇用契約を結ぶ必要があります。採用の具体的な進め方は別途専門家に相談するのが無難です。

本社へのレポーティング体制

現地法人を「作ったが見えない」状態にしないために、本社が現地の数字とリスクを把握できる報告の仕組みを最初に決めておきましょう。月次の財務報告と、現地で起きた問題を吸い上げるルートの2つがあれば、判断が遅れにくくなります。

設立を代行に任せるか、伴走支援を使うか

法人設立は設立代行に依頼するのが一般的ですが、「設立だけ」を切り出して頼むか、「設立から運営まで」を伴走で頼むかで、その後の進めやすさが変わります。

設立代行(スポット)が向くケース

進出形態も進出先も固まっていて、社内に海外事業を回せる人がいる場合は、設立手続きだけをスポットで代行に頼めば十分です。費用も手続き部分だけで済みます。

伴走支援が向くケース

社内に海外経験者がいない、設立後の運営まで見てほしい、業種規制や形態の判断から相談したい――こうした場合は、設立から運営まで一貫して関わる伴走支援のほうが結果的に無駄が少なくなります。設立だけ別業者、運営は自社、という分断が起きないためです。詳しくは海外進出の伴走支援サービスとはで解説しています。

国別の費用・手続きの違い(東南アジア主要国)

同じ「東南アジア」でも、国によって設立のしやすさは大きく違います。代表的な3カ国の傾向を簡単に整理します。

ベトナム

製造業の進出先として人気で、工業団地のインフラも整っています。一方で、投資登録証明書(IRC)と企業登録証明書(ERC)の2段階の手続きが必要で、業種によっては認可に時間がかかります。製造拠点の設立はベトナムに製造拠点をつくるならで詳しく解説しています。

タイ

外国人事業法(FBA)により、多くのサービス業で外資比率が制限されます。BOI(投資委員会)の恩典を受けられれば外資100%も可能になるため、BOI申請を視野に入れるかが分かれ目です。IT事業の進出はタイでIT事業を立ち上げて分かったことも参考になります。

インドネシア

人口2.7億の巨大市場ですが、外資規制(ネガティブリスト)が複雑で、最低資本金の要件も高め。設立後の各種ライセンス取得にも時間がかかるため、現地の専門家のサポートがほぼ必須です。

事例1:製造業C社(従業員90名)のベトナム法人設立

自動車部品のC社は、取引先の現地調達要請を受けてベトナムに製造法人を設立することになりました。社内に海外法人設立の経験者はおらず、最初は「何から手をつければいいか分からない」状態でした。

実際に進めると、ボトルネックになったのは登記そのものより銀行口座の開設でした。投資登録証明書と企業登録証明書の取得は現地会計事務所のサポートで2ヶ月ほどで完了したものの、法人口座の開設で取締役の現地面談が求められ、社長の渡航スケジュール調整で3週間のロスが出ました。「口座開設にこんなに時間がかかるとは思わなかった」というのが率直な感想で、ここを最初から織り込んでいれば全体で1ヶ月は短縮できたはずです。設立から操業準備まで、最終的に約4ヶ月かかりました。

事例2:IT企業D社(従業員25名)のタイ法人設立

SaaSを提供するD社は、タイでの販売拠点としてタイ法人を設立しようとしました。ところが進め始めてから、外国人事業法によって自社のサービス業が外資51%以上の出資制限の対象になることが判明。当初の「日本本社100%出資」という計画を見直す必要が出ました。

最終的にはBOI(投資委員会)の恩典申請を行い、外資100%での設立を実現しましたが、BOI申請には事業計画の精緻化が求められ、想定より2ヶ月ほど余分にかかりました。D社のケースは「業種の外資規制を最初に確認していれば、最短ルートを選べた」という典型例です。設立形態を決める前に、自社の業種が現地でどう扱われるかを必ず確認することの重要性を示しています。

海外法人設立でよくある失敗

僕たちが見てきた中で、設立段階でつまずく典型的なパターンを挙げます。

業種の外資規制を後から知った

設立を進めてから「うちの業種は外資100%では営業できない」と判明し、計画を組み直すケースです。最初に必ず確認すべき項目を見落とした結果で、最も痛い失敗です。

銀行口座開設の難しさを甘く見た

「法人を作ればすぐ口座が開ける」と思い込み、取締役の渡航スケジュールを確保していなかったために、登記は済んだのに口座がなく事業が動かせない、という事態です。口座開設は早め早めに動きましょう。

ランニングコストを見積もっていなかった

前述のとおり、設立後の固定費を計算に入れず、運営途中で資金が尽きるパターンです。設立費用だけでなく、最低1年の運営費を含めた資金計画を立ててください。全体像は中小企業の海外進出ガイドで確認できます。

よくある質問(FAQ)

海外法人の設立にはどれくらいの期間がかかりますか?

国と業種によりますが、書類準備から登記完了まで1〜3ヶ月、銀行口座開設や各種登録まで含めると2〜4ヶ月が一般的な目安です。許認可が必要な業種ではさらに時間がかかります。書類認証と銀行口座開設がボトルネックになりやすいので、早めに着手してください。

海外法人設立の費用は最低いくらから可能ですか?

資本金とオフィスを除いた手続き費用だけなら、国によっては50万円程度から可能です。ただし設立代行への依頼や書類認証を含めると、現実的には50〜150万円を見込んでおくと安全です。安さだけで代行を選ぶと、後から追加費用が発生することもあるので注意してください。

現地法人と駐在員事務所、どちらから始めるべきですか?

売上を立てたり契約を結ぶ予定があるなら現地法人が必要です。まずは市場調査だけしたい段階なら、設立が軽い駐在員事務所から始める選択もあります。ただし駐在員事務所は営業活動ができないため、本格進出が見えているなら最初から現地法人を作るほうが二度手間を避けられます。

自社だけで海外法人を設立できますか?

理論上は可能ですが、現実的には現地の会計事務所や設立代行のサポートを使うのが一般的です。書類認証、現地語の定款作成、当局とのやり取りなど、現地の事情を知らないと進めにくい工程が多いためです。

設立後にかかる費用にはどんなものがありますか?

会計・記帳代行、税務申告・監査、オフィス賃料、現地スタッフの人件費などが継続的にかかります。国によっては法定監査が義務付けられており、年間で数十万円の費用が発生します。設立費用だけでなく、これらのランニングコストを含めた資金計画が重要です。

まとめ:手順より「最初の確認」と「運営費」が勝負

海外法人設立は、現地法人・支店・駐在員事務所のどの形態で出るかを決め、業種の外資規制を確認するところから始まります。手順自体は会社名・資本金の決定、書類準備と認証、登記申請、銀行口座開設、各種登録、ライセンス取得の6ステップで、国によって細部は違っても大枠は共通です。

費用は設立時の初期費用(手続きだけで50〜150万円が目安)と、設立後のランニングコストの2つに分けて考えてください。失敗の多くは、業種規制の見落とし、銀行口座開設の難しさの軽視、ランニングコストの見積もり不足から起きます。設立はゴールではなくスタートなので、最低1年分の運営費を確保してから動くのが鉄則です。

僕たちEONは、東南アジア・中央アジアでの法人設立から設立後の運営まで、企業の海外事業部として伴走しています。「自社の業種と進出先だと、手順と費用が具体的にどうなるのか」を整理したい方は、こちらからお気軽にご相談ください

よくある質問

海外法人の設立にはどれくらいの期間がかかりますか?
国と業種によりますが、書類準備から登記完了まで1〜3ヶ月、銀行口座開設や各種登録まで含めると2〜4ヶ月が一般的な目安です。書類認証と銀行口座開設がボトルネックになりやすいので、早めに着手してください。
海外法人設立の費用は最低いくらから可能ですか?
資本金とオフィスを除いた手続き費用だけなら、国によっては50万円程度から可能です。ただし設立代行への依頼や書類認証を含めると、現実的には50〜150万円を見込んでおくと安全です。
現地法人と駐在員事務所、どちらから始めるべきですか?
売上を立てたり契約を結ぶ予定があるなら現地法人が必要です。まずは市場調査だけしたい段階なら、設立が軽い駐在員事務所から始める選択もあります。本格進出が見えているなら最初から現地法人を作るほうが二度手間を避けられます。
自社だけで海外法人を設立できますか?
理論上は可能ですが、現実的には現地の会計事務所や設立代行のサポートを使うのが一般的です。書類認証、現地語の定款作成、当局とのやり取りなど、現地の事情を知らないと進めにくい工程が多いためです。
設立後にかかる費用にはどんなものがありますか?
会計・記帳代行、税務申告・監査、オフィス賃料、現地スタッフの人件費などが継続的にかかります。国によっては法定監査が義務付けられており、年間で数十万円の費用が発生します。